いくりんのブログ

つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

ホントの時間

淡い恋心を抱いた若い男女がいる。二人がどういう関係にあるのか、まだ誰も知らない。

 

 夕暮れ時、思い思いに街に繰り出した男女が偶然たまたま出逢う瞬間、どことなく心踊らされる。お互いの趣味やちょっとした日々の思いつきの話に花を咲かせていると、気付けばあっという間に時間が過ぎ去り、夕闇を街の灯りが照らし始める。そろそろ家に帰らなければならない、夕食の時間だと、いつもの当たり前の日常を思い起こしていると、自分がどこか当たり前ではない不自然な感情の揺らめきに遭遇していたことに戸惑う。

 

君と二人で立ち話しているときのこの心躍る瞬間はまるで時が止まったように幸せな時間だ。

 

 それが世界の真理だと言わんばかりに、時計の針は時を刻み続け、一分一秒と時は前に進み続けている。だが本当に時計は同じ時間を刻み続けているのだろうか。だって、どう考えたって、君と二人でいるとき、時間は止まっていた。それが大袈裟だっていうなら、この時間は永遠に続くものだって思っていた。気付けば一時間、二時間、三時間・・・。どうしてこんなにも時間が勝手に進んでいるんだろう。あっという間に過ぎるってレベルじゃない。これは神様が二人の時間のネジをぐるぐるぐるぐる回して調節しているとしか思えないレベルだ。

もう夜も深くなってしまって、街に人がいなくなってきた。何も世界は動いていないように見える。この真っ暗な空の下に存在するのは二人だけのアンバランスな感情だ。呼吸をするたびにどんどん苦しくなる。これが恋する気持ちなのかと動揺している自分がいる。明日も、明後日も、これからもずっと一緒にいたいという気持ちが募る。こんな気持ちを抱いていることなんて、誰も知ったこっちゃないだろう。人はみんな自分の人生を自分の好きなように生きたいと思っているはずだからね。じゃあ、その生きたいと思う自由な世界は、人の数だけ、思い思いの時を刻み続けているのかもしれない。

 君とこうして過ごしている時間は同じ時間を刻み続けているのだろうか。もしかしたら、とても退屈で今にもさっさと帰りたいだなんて思っていないよね?自分たちは同じ楽しいひとときを過ごしているよね?そんな当たり障りのないことに不安を感じたり、喜びを覚えたりしながら、本当に時間の進み方ってよくわからないと納得し合えたらなんだか清々しい気持ちになれた。でも、一日が終わろうとする今もまだ胸にモヤモヤがずっと残っている。だって、こんなに心踊らされる相手に出会えたのは初めてだから。だから、多少不安な気持ちを抱いているんだ。「こんなに好きになっちゃっていいの?」ってね。

 

 


日向坂46 『こんなに好きになっちゃっていいの?』