いくりんのブログ

つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

こんなに好きになっちゃっていいの?

 すごく久しぶりにブログを書くことになりました。日向坂46の3rdシングル「こんなに好きになっちゃっていいの?」が発売されたことに喜びを感じております。9/26には3rdシングル発売を記念してさいたまスーパーアリーナでワンマンライブが開催されました。私も、ライブビューイングで観戦しましたが、非常に満足感の高いライブでした。それと同時に、アイドルファンが陥りやすい一抹の寂しさを抱いています。それについて触れていきたいと思います。

 私は根本的には欅坂46の方に傾倒している面があるので、ひらがなけやき時代の歯がゆい思い出の記憶が印象に残っています。特にzeppツアーをやっていたころの内に秘めた熱量の胎動のようなものを間近に見て感動した記憶があります。後に2期生、3期生という強力なピースを加えて走り出していく精鋭集団である現在の日向坂46に、そのような得体の知れないたくましさのようなものを感じることは少なくなりました。それは、彼女たちが注目され、認められ、人気を博していったという状況が、彼女たちをアイドルにしてしまったからだと言えると思います。彼女たちは元からアイドルだったわけですから、それはいささか不可思議な言い方かもしれません。しかし、彼女たちがひらがなけやきとしてあまりにも中途半端な立場に置かれていたことを思い起こすならば、日向坂46として独立して数ヶ月で3枚もシングルを出すに至って、世間から注目され一定の評価を得ている状況に対して、良くも悪くも彼女たちが遠い存在になっているという実感を抱かざるを得ません。坂道グループのひとつの自立した“アイドル”として歩みだしたという事実は非常に好ましいことではあるのですが、彼女たちがアイドルというフィルターを通してしか見ることができない尊い存在になってしまっているのもまた宿命的な事実です。

 私たちはある言葉や現象に対して市民権を得るという言葉を使うことがあります。例えば、ピコ太郎のYouTubeで始めたPPAPが世界的に大きく広まって、日本でも紅白歌合戦に出場するまでの大フィーバーとなった。このような現象を指してPPAPは市民権を得たなどと言ったりします。ここで言う市民権とは、○○市の住民として住民税やその他もろもろの税金を納める代わりに、その地域に居住したり、選挙権を行使したり、一定の発言や思想を自由に展開させることができる権利を指しているのではありません。特定の一部のユーザーやファンに向けられていた現象が広く認められて一般化することを言います。

 日向坂46はある意味で広い意味の市民権を得つつあると言えるのではないかと思うのです。ひらがなけやきの一員として彼女たちが活動していたころ、彼女たちは欅坂46というグループに実質的に代表されていたと見ることができます。実質的代表(virtual representation)ということはつまり、彼女たちに直接的に市民権は与えられないけれども、欅坂46を通して、実質的には世間に認められているという見方です。しかし、欅坂46というグループの一員ではありましたが、ひらがなけやき漢字欅と根本的に違うハッピーオーラをテーマにしたグループでしたし、漢字欅のある種ダークでカッコよい路線とは一線を画したものでした。しかしながら、彼女たちには当時は世間的に名前を持つことが叶いませんでした。ある種、一般的に女性が男性の家に嫁いで、自らの姓が実質的に消滅してしまうことと似ています。今でこそ男女平等普通選挙権が当たり前の世の中になっていますが、自らの姓を失うことは名前を失うことであり、○○家の人間という括りで女性には市民権は保証されない時代が非常に長く続いてきたという歴史があります。それとこれを同一視するのはいささか無理な話ではありますが、実質的な代表ではなく、自立した坂道グループとして「日向坂46」が誕生したということは、狭い意味で彼女たちが市民権を得たということであり、シングル発売とイベントの開催を通じて広い意味で市民権を得ている過程にあるということができます。

 これから先、どのような展開が待ち受けているのかわかりません。エースの小坂菜緒は果たしていつまでセンターポジションを務め上げるのか、他のメンバーによるセンター交代はあるのか、紅白歌合戦に出場はできるのか、クリスマスライブやドラマはどんな内容だろう、影山優佳や濱岸ひよりは本当に戻ってくるのか、戻ってきた日向坂46にどのような化学反応が生じるのか、などなど、非常に楽しみな材料がたくさんあります。ある種、一定のラインを超えて羽ばたいていっている感が嬉しくもあり寂しくもあり、それがアイドルを応援することの宿命だなあと感じています。